先染め織物の着物の黄変シミの染み抜き

着物に限らず、衣類は糸を織って生地を作っているのですが、着物の染色においては、大きく分けると二つに分かれます。
先染め(さきぞめ)と後染め(あとぞめ)です。

先染めというのは、織る前の糸を先に染料で染めておき、それを生地として織ることで、染めや柄のある生地になります。
絣(かすり)の柄のある紬などは、先染めの代表的な物となります。

後染めというのは、染色していない糸を織って白生地にした物を後から染色して、染めや柄のある生地にすることです。
染め屋さんが白生地をそめた物は全て後染めということになります。

そんな先染めと後染めの二種類がある着物ですが、先染めで作られた生地、特に先染めした糸により柄を織りで表現した物は、染み抜きが難しい傾向があります。

なぜか?というと、染み抜き、特に変色したシミを染み抜きする場合、染み抜き作業によってシミと一緒に地色も抜けてしまうことも多いのですが、後染めの着物の場合、作る際に生地を後から染めているので、色修正においても、部分的に染め直すという理屈で、元の染色と馴染みやすいんですね。
一方、先染めの着物の場合、染まった糸を緻密に織って染めや柄を表現しているので、色が抜けてしまうと、どんなに頑張って色修正を行っても、生地自体を染めている物ではないので、染料がうまく馴染まないという現象が起きてしまうのです。

今回は、そんな先染めの着物の変色・黄変したシミの染み抜き事例です。

先染めの着物 染み抜き前


これは、先に染めた糸を織ることで柄を表現した着物です。
染み抜きでこの柄まで抜いてしまうと、どんなに頑張って色修正を行っても、どうしても違和感が残ってしまいます。

ですので、先染めの着物の染み抜きを行う際は、いかにシミを抜いても地色を抜かないか?ということに力を注ぐことが肝心となります。

先染めの着物 染み抜き後


濃い変色シミを目立たなくすることと違和感を残さないことを両立させるためのギリギリのラインでバランスを取った仕上がりとなりました。
ご着用には全く支障がない状態に直せたかと思います。